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怪しげなラーメン屋に行った夢

  めちゃくちゃ美味しいラーメン屋があるらしく、車に乗って川沿いの土手を走っている。何故か川の水が不自然なまでに鮮やかな青さで、大きな波や渦が所々に見えて違和感を覚える。店に着いてみると、トタンに覆われた粗末な店構えだった。

「ははあ、そういうタイプの名店なんだな」と思って入ってみると、中は意外なまでに広く、若い店員が動き回っており活気に満ち溢れている。なんというか鳥貴族みたいな感じだった。入り口のすぐ側には食券機がある。ラーメンの食券を購入し、店員さんに渡した。すると、視界の端に変な貼り紙があるのに気づいた。近寄って見てみると、古びて少し茶色くなった紙に筆でこう書いてあった。

「トイレは、2階にて、鳥居に、お願いします。」

なんとも罰当たりな、と思いながらもどういうことか興味が湧いてしまったので、これまた古びた急角度の階段をギシギシと上ってみた。上りきるとすぐに、よく学校にあるような個室が4つ並んでいるトイレが見えた。扉を開けると、中には和式のボットントイレがある。ただ異様なのは、それぞれの便器の穴に鳥居の足が1本ずつ突き刺さっていることだった。つまり鳥居が2つ少しズレて並び、4つのトイレを跨いで鎮座している、そういう状態だった。鳥居はだいぶ古いものらしく、赤い塗装は大部分が剥げ、至る所がささくれ立っていた。トイレを鳥居に、とはあまりにも文字通りな貼り紙だったわけだ。少し尿意があったものの、鳥居におしっこをひっかけてしまうのは気が引けたので我慢して扉を閉めた。

 

突然後ろから楽しそうな話し声が聞こえてきたのでギョッとして振り返ると、女子高生だか女子大生だかの4人組が階段から姿を現した。俺のことには目もくれず、

「何このトイレ、ヤバ~www」

などと言いながら楽しそうにはしゃいでいる。彼女たちも下の貼り紙を見て来たのだろう。すると、そのまま各々がきゃあきゃあ笑いながら個室に入っていった。どうやらここは男女兼用らしい。

 

少しして、3人がトイレから出てきた。

「あれ?マリまだなの?」

「ほんとだ、何やってんの~?」

みたいな会話をしている。確かにまだ1つ、奥の扉が開いてない。それから少しして、その扉がゆっくり開いた。

 

誰もいなかった。

 

残された3人は顔面蒼白になった。パニックになる数秒前といった感じだった。と、別のトイレの扉が開いた。開いたかと思うと中からものすごい勢いで大きな白い蔓というか根のような物が数本飛び出し、3人のうちの1人を絡め取るとそのまま個室の中に引きずり込み、扉がバタンとしまった。あまりに一瞬の出来事だったため、誰からも悲鳴のひの字すら上がらなかった。

 

一拍置いて、2人は半狂乱になりながら泣き叫び、階段を転げ落ちるように逃げていった。とりあえず自分もそれに続いてその場を後にした。

 

降りてみると、自分の席にカップヌードルが置いてあった。ラーメンを頼んだはずなのになあ、と首を傾げていると、若い女性の店員が寄ってきて

「すみませえん、あいにく今ラーメン切らしちゃってましてぇ」

と意地汚いトーンでニヤニヤ笑いながら宣うと、そのまま踵を返していった。その尻には狐の尻尾が生えていた。

 

なんとなく理解ができた。要するに、ここは人間を不思議な力で誘い込み、ノコノコやって来た者たちを取って食う場所なのだ。思い返してみれば、

「めちゃくちゃ美味しいラーメン屋がある」

と誰から聞いたのか、どこでその情報を見かけたのか、全く思い出せない。

 

ふと気付くと赤紫色の人魂が数個、目の前を飛び回っている。あれに付いて行かなければ、そんな気がした。いつの間にか辺りは真っ暗になっていて、仄暗い灯りに照らされた細い一本道だけが何処までも続いて見える。それに沿ってゆらりゆらりと歩き出した。脇を見るとさっきの店員が下品に笑いながら踊っている。

 

と、突如ぬるりとした感触が腕に纏わりついたかと思うが早いか物凄く強い力で後ろに引っ張られた。

 

振り向くと、全身緑色の粘液に覆われた僧侶が俺の腕を掴んでいた。ただ、そいつの頭だけがマグロのそれだった。逆人魚と言うべきか、奇怪な容姿の何かがそこに立っていた。辛うじて僧侶だと分かったのは、黒い袈裟を着ていたからだ。そのまま再度強い力で引っ張られ、気が付くとテーブルに半ば無理矢理着席させられた。辺りはまたこれまでとは違った、ネオンの光る怪しげなレストランになっていた。

 

そして謎の僧侶も俺の向かい側にゆっくりと座った。俺はこいつに食われるのか、と思って覚悟と恐怖が入り交じった気持ちでガタガタ震えていると、意外にもそいつはしゃがれた声で流暢に喋り出した。

「お前がこんな場所に来てしまうのは、お前が儂らのような存在に仮初の懐かしさを抱いているからだ。その気持ちはな、いったん忘れないといけない。」

 

何か返事をしようとした.......ところで目が覚めた。もうちょっと話してみたかったなぁ~